七月十日。晴れて風涼し。燈刻銀座食堂に飯す。この夜銀座表通のみならず裏通にも制服の学生泥酔放歌して歩むもの多く裏通の小料理屋の二階にも学生乱酔して喧嘩するものあり。諸学校この頃暑中休暇に入りし為なる由通行人の話なり。銀座は年と共にいよゝゝ厭ふべき処となれり。(永井荷風 断腸亭日記「昭和十年」)