風月堂
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十月三十一日 水 晴昼、高嶺君と風月。午後、土井晩翠氏理研へ来訪。(寺田寅彦日記「昭和九年」)
(847夜)
十月二十八日 日小宮君上京。朝、帝展一覧。午後、日比谷劇場で「エノケンの魔術師」を見る。教文館古書展で「土佐句テニハ集」を求む。夜、小宮と竹葉、コロンバン。(寺田寅彦日記「昭和九年」)
十月二十四日。天気快晴。終日困臥すること毎日の如し。日暮れて後オリンピクに飯す。神代君来る。供に歩みて西銀座裏通に至る。ラインゴルドの店頭にて主人に逢ひて立談す。欧州大戦前一二年頃のベルリンの空気は現時の東京と頗(すこぶる)相似たるものありきと言ふ。(永井荷風 断腸亭日記「昭和七年」)
美土代町基督教青年会館の地下室で、ライスカレー等の一品料理をはじめ、ライトランチもあって、ごく低額で食事がとれます。(白木正光編『大東京うまいもの食べある記 昭和八年版』)
間口は大して広くありませんが、前庭を取った江戸風の構へが、神田の一流処であることを語ってゐます。牛鳥、日本料理で昔から有名な家で、間口に比し、奥行きは素晴らしく深く、部屋も沢山あって、こゝなら誰が行っても恥かしくありません。(白木正光編『大東京うまいもの食べある記 昭和八年版』)
十月二十一日 日 晴近来の好晴、十一時ごろよりドライブに出かける。松坂屋で弁当を用意し、千住、松戸を経て安孫子に行き、手賀沼のほとりにて昼食。さらに取手駅手前の利根川河畔の沼沢地を見晴らす。穂すすき一面にて美し、橋を向こう側に渡りて引き返す。(寺田寅彦日記「昭和九年」)
10月10日(水)飯田 吉川 松井と帝劇に若草物語をみるのち 青山いろはに行く(小津安二郎日記「1934(昭和9)年」)
十月七日 日曜日 振りつゞきたる雨晴れもやらず、風も吹き増りたり。北より吹きつくる風なれば気温も下りて華氏五十七八度となれり。掃塵の後臥床に入りてプレヴオの小説を読む。晩間雨を冒して銀座に往き風月堂にて肉汁にマカロニを食す。腹痛をおそるゝが故なり。三越にて食料品を購ひ亜凡茶店に立寄るに萬本酒泉の二氏あり。(中略)此日より電車従業員再び同盟罷業をなすと云ふ。電車乗合自働車共に夜十時かぎりにて切上げなりと云ふ。風雨終夜歇(や)まず。残虫声なし。(永井荷風 断腸亭日記「昭和九年」)
十月六日 土 雨昼、高嶺君と風月、帝劇の「若草物語」を見る。朝、順、夏子同伴西下。しん、見送る。(寺田寅彦日記「昭和九年」)
十月二日 火 曇中谷君、満州より帰途立ち寄る。坪井君と三人で風月行き。丸善で雪子と青木君ほか一名に会う。(寺田寅彦日記「昭和九年」)
10月1日(月)夕方東京駅で会ふ 山中* 岸**と上野揚出し のちフレーデルマウス山中 深川泊母長井より帰る瓦版かちかち山 試写みる(小津安二郎日記「1934(昭和9)年」)