2022-04-09

神風号

神風号のマッチラベル

 

純国産機にて決行
新記録を目指す一万六千キロ


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昭和12年4月6日、東京・ロンドン間の飛行時間記録に挑む朝日新聞社の飯沼正明飛行士、塚越賢爾機関士が搭乗した神風号*は、午前2時12分に立川陸軍飛行場を離陸した。
神風号は、給油・仮眠のために台北、ハノイ、カルカッタ、カラチ、バスラ、バグダッド、アテネ、ローマ、パリ等を経由し、ロンドン・クロイドン飛行場に4月9日午後3時30分(日本時間10日午前0時30分)に着陸した。
東京・ロンドン間の飛行総距離15,357km、所要時間は94時間17分56秒だった。 


四月九日 金
午後、佐藤春夫氏を訪ふ。唐助の早稲田腰掛けの月謝の内、五十円借りて来た。
夜、夕食後東朝航空部へ行き、神風号の倫敦着の報をきき、午前二時帰った。午前より午後にかけて先月の中央公論に乗り遅れた原稿「二銭紀」の校正をした。

(内田百間日記「昭和十二年」)

(277夜)

*昭和12年に陸軍九七式司令部偵察機に採用された三菱キ15の試作2号機。機体の塗装デザインは洋画家の山路真護が手がけた。