十二月初二。空晴れわたりて雲なし。午前Georges Duhamelの小説深夜の懺悔を読む。午睡晡下に至つて覚む。故知十翁の遺集鶯日を繙く。燈刻出でゝ銀座に飯す。陰暦十月十五夜の月鏡の如し。此夜土曜日なれば銀座表通の雑沓を避け裏通を歩みて喫茶店きゆうぺるに至る。(永井荷風 断腸亭日記「昭和八年」)