純仏蘭西料理 米国式中華料理
神田
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多賀羅亭は神田区淡路町1丁目(現・千代田区神田小川町1丁目)にあった。
二人はその角にある西洋料理屋へ入った。その時彼はその門口から射す強い光を浴びた男と女の顔を横から一眼見た。彼らが停留所を離れる時、二人連れ立ってどこへ行くだろうか、敬太郎にはまるで想像もつかなかったのだが、突然こんな家へ入いられて見ると、何でもない所だけに、かえって案外の感に打たれざるを得なかった。それは宝亭と云って、敬太郎の元から知っている料理屋で、古くから大学へ出入をする家であった。(夏目漱石『彼岸過迄』)
(854夜)