大東京一周年記念
昭八 十月 富可川好*
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昭和7年に丸ノ内飲食業組合が企画・主催した盆踊り大会「丸ノ内音頭祭り」は、8月15日から20日まで日比谷公園で開かれた。
この催しのために作られた「丸ノ内音頭」(作詞:西城八十、作曲:中山晋平)は、日本ビクターから同年7月に藤本二三吉・三島一声のレコードが発売された。
同曲は翌昭和8年に「東京音頭」と改題され、小唄勝太郎・三島一声のレコードが発売されると流行歌になった。
十一月初二。晴れて暴(にわか)に暖なり。庭の山茶花忽(たちまち)満開となる。北窓より眺むる住友氏園林の銀杏半黄を呈す。雑誌集古〔癸酉五号〕を披き見るに今年の秋盛に流行せし東京音頭の事につきて云へる文あり。仕来りといふもの荒草の絶えしかと思へばまた芽をふくことあり。風俗を紊(みだ)すとて禁ぜられし盆踊も古の歌垣などの名残なるべし。此頃ハ何音頭と名付け諸所の広場にて行はれぬ。世の末に大衆の踊のはやりし事史書にも見ゆとて幽静を好まるゝ老人苦き顔をしぬ。云〻
(永井荷風 断腸亭日記「昭和八年」)
(484夜)
*井上忠次郎(おでんの富可川経営者、丸ノ内飲食業組合員)